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おいしい醤油の作り方 〜 小豆島「醤の郷」訪問記 〜



テレビCMなどで「ちょっと良い醤油」を見かけるようになりました。

醤油は日本人にとって馴染みの深い調味料ですが、これまではその良し悪しよりも、容量や価格が購入の大きな決め手になっていました。いまでもスーパーの特売品で見かけますよね。大容量低価格の醤油。


「安ければ良い」というデフレの波に揉まれてきた醤油ですが、最近は少し消費者の意識に変化が生まれてきたようです。日本の伝統食の良さが見直され、また食の安全について叫ばれる現代は調味料への関心も高まっているのでしょう。それが各メーカーの「ちょっと良い醤油」商品戦略に現れている気がします。



早稲田自然食品センターでも、全国各地から、様々なこだわりの醤油を取り寄せています。
どの醤油もとてもおいしく、造り手のこだわりが詰まったものばかりです。


棚に並んだ醤油を眺めながら、ふと思いを馳せてみました。


「本当に良い醤油って、何だろう?」



答えを探しに、小豆島へ


早稲田自然食品センター副店長の寺島Dは、香川県は小豆島へと渡りました。
小豆島で約80年、醤油造りを営む「株式会社ヤマヒサ」の醤油造りを見学するためです。


小豆島はオリーブと醤油の産地として全国的に知られており、醤油は野田・銚子(千葉)、龍野(兵庫県)、大野(石川県)と並ぶ「五大名産地」の一つと言われています。
最盛期の明治時代には約400もの醤油蔵が軒を連ねていたという島の一帯は「醤(ひしお)の郷」と呼ばれ、観光客にも人気のスポット。その一角に、ヤマヒサの醤油蔵はありました。



おいしい醤油ができるまで [1]製麹(せいきく)


「えっ!これが醤油蔵…?」

醤油を造る現場へ入ると、そこには巨大なタンク状の機械が並んでいました。
ご飯が炊けた時のような、ほのかに甘い香りがふんわりと立ち込めています。

これらの機械は、醤油造りの中でも非常に重要な「製麹(せいきく)」という工程を自社で行うためのもの。
「製麹」とは、蒸した大豆と深煎りした小麦に、種麹を合わせてもろみを仕込む作業のことで、大豆と小麦の種類や割合、種麹の種類によって醤油の味わいが変わってきます。
ところが、この機械を自前で持っている醤油蔵は、実は多くありません。


「製麹」そしてこの後にご紹介する「発酵・熟成」「圧搾」という醤油造りの各工程は、エネルギー面でも人的面でも非常にコストがかかるため、この工程をすべて自社で行っている醤油蔵は、全国1500軒あるといわれる中で、たった200軒ほどしかありません。
ヤマヒサは、その200軒のうちの一つなのです。


ヤマヒサは創業当初から「醤油造りにおいては『生産者』であるが、その他では『消費者』である」という姿勢で醤油を造ってきました。原料にもこだわっており、国産大豆や国産小麦、また農薬や化学肥料不使用のものも扱います。そのため、コスト高でも「製麹」の工程からすべてを自社で行っているのです。


おいしい醤油ができるまで [2]発酵・熟成


木造2階建の醤油蔵へ続く階段を上ると、醤油の濃厚な香りが鼻翼をくすぐります。
蔵の外壁に顔を近づけてみると、ここにも醤油の香りが染み付いていました。
平成15年に国の登録有形文化財となったこの蔵で、もろみは約2年の歳月をかけてじっくりと発酵・熟成されます。
一般的な濃口醤油の熟成期間は長くても半年位ですから、ヤマヒサの醤油は実にその4倍
自然の摂理にまかせた、昔ながらの製法を守り続けているそうです。



樽も壁も、天井の梁に至るまで、白と黒の斑模様がびっしり付いているのが見えました。
実はこの斑模様が、この蔵に蔵付きの酵母菌が棲み着いている証。

醤油を造るときに活躍する酵母菌は一種類ではなく様々な種類がいますが、蔵によって棲み着く酵母菌の種類やバランスがそれぞれ異なり、これが醤油の味を決めるのだそう。

「タンクで仕込む醤油もありますが、様子をみてどうもイマイチだな、という時にタンクから木樽に移し替えると、不思議と安定するんですよ」(株式会社ヤマヒサ 代表取締役社長 植松勝久さん)

蔵じゅうから、長い長い年月を経て棲み着いた酵母菌たちの気配が感じられる…そんな気にさえなってきます。


「だから、僕たちは『醤油を造る』とは言いません。『醤油ができる』と言うんです」と、勝久さんは笑います。


蔵の中には、ごく小さい音量で琴の調べが流れていました。

「昔、ワインにクラシックの音楽を聞かせるとおいしくなる、という話を聞いた先代社長が、『じゃあ、醤油は日本のものだから、和の音楽がいいな』と言って、邦楽を流すようになったんです」(勝久さん)

直径2mはある大きな杉樽に入ったもろみは今まさに発酵の途中で、琴のゆったりとした曲調に合わせるかのように、時折ぷくり、ぷくり、と樽の底から気泡が上がっていました。酵母菌が音楽を楽しんでいるような、その様を見ていると、時間を忘れてしまいそうになります。


樽をかき混ぜるための櫂(かい)の持ち手に付いたもろみを指ですくって舐めてみると、なんともいえない濃厚な旨味が口の中に広がりました。


おいしい醤油ができるまで [3]圧搾・火入れ

蔵を出て、再び巨大な機械が並ぶ工場に入りました。


ここは発酵・熟成させたもろみを3日間かけて絞って「生醤油」にし、最後にそれを「火入れ」「瓶詰め」するところなのだそうです。

もろみを包んだ布を何十枚と重ねて、その上から機械でプレス。
じっくり、じっくりと生醤油を絞ります。


あの漆黒の瓶に醤油が詰められるまでの工程にかかる時間と手間に、すっかり圧倒されてしまいました。


良い醤油。それは「信頼」できる製品のことかもしれない。

原料、製法にこだわったヤマヒサの醤油。
おいしくないわけがありません!
ところが時折、「前に頼んだものと味が全然違うのね」と、お客様から電話が来ることもあるそう。それもそのはず、ヤマヒサは出来上がった醤油に対して味の調整を一切行わないと言います。

酵母菌のバランスや気温、湿度によって、でき上がる醤油の味が違う…。
よく考えてみれば、当たり前のことですよね。


原料にこだわる。

自然の摂理にまかせて発酵・熟成させる。

余計なものは添加しない。


すべてはお客様の口に入るものだから。
自分や家族が、いち消費者として安心して食べられるものしか造らない、という強い想いが醤油の味に現れているのです。

巨大な圧搾の機械が並ぶ工場内に掲げられた「信頼」の二文字を見て、探し求めていた「良い醤油」の答えの一つが、そこにある気がしました。


株式会社ヤマヒサ
〒761-4411 香川県小豆郡小豆島町安田甲243
http://yama-hisa.co.jp/


▼ヤマヒサの商品はこちら

杉樽仕込しょうゆ
【内容量】 : 720ml








小豆島有機こいくちしょうゆ
【内容量】 : 500ml
【原材料】 : 有機大豆(国産)、有機小麦(国産)、食塩